TOP >> GOOD MORNING 学園長!

GOOD MORNING 学園長!

第44話 翻訳家になるための条件(その二)

私の返答:そのブラックホールのような箇所の読み方を理論的に説明することは、実に簡単なことなのですが、その理論を常日頃読んでいる英文の小説に容易に生かすことができるかどうかには問題があります。つまり、アメリカの子供たちが英語の会話から始まって、学校に通う努力の中で文字による書き言葉を学ぶように、英語の小説を読む、即ち英語の「書き言葉」を読むということは、ただ単に「英語の会話」の延長線上にはないということです。つまり、英語の会話、即ち英語の話し言葉をいくら極めても、日本語においても日本語の書き言葉を理解することができない(文盲という概念があるー英語ではilliterateと表現する)のと同じように、英語の書き言葉を理解することはできません。要するに、「あなたはアメリカ人(アメリカ人の思考)になりきれてもいないし、また英語の”書き言葉の理論”を身に付けてもいない」ということになります。更にいうと、身も心もアメリカ人になり切れないと、英語の話し言葉から始まって、英語の書き言葉を理解することはできない、というわけです。更に重ねていうと、「英会話から英語の書き言葉を理解する」という考え方は、日本人のアメリカ文化に対する異文化理解ではなく、”同化現象である”ともいえるでしょう。
「ところで、あなたはアメリカにいたとき、日本の作家の書いた小説で、しかも英語に翻訳された小説を読んだことがありますか。その時には、あなたのいう“ブラックホール現象”はなかったのではないですか?」
女性の返答:全くありませんでした。
私の返答:そうだと思います。その一見英文で書かれた小説は、本質的には、英語の小説ではなく日本語の小説なのです。従って、その小説を自分の満足できるところまで読めたということは、要するに、あなたは未だアメリカ人(アメリカ人の思考)にはなりきれず、日本人の思考があなたの頭の中に根強く残っている(つまり、アメリカ文化に同化されていない)ことを証明しているのです。

それでは、Good bye!